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【ウマ娘】SS 「夕日がトレセン学園の教室を包む。」

  • Posted by: 大蠍
  • 2021-05-18 Tue 12:00:00
  • ウマ娘
夕日がトレセン学園の教室を包む。
授業が終わる気だるい雰囲気とともに、俄に活気のあふれる慌ただしさもウマ娘達の間で迸り出す。
もうすぐオークスが近いのも手伝ってか、練習に挑む彼女たちの間には、緊張感でもあるようなお祭り前の期待感でもあるような、
心が騒ぐような空気が醸し出されていた。
そんな中で、机に突っ伏し唸っているウマ娘がいた。
『ダービーウマ娘』ことウィニングチケットである。
「チケット、どうしたの?」
そう話しかけるのは、彼女の友人であるナリタタイシン。
「また何かあったのか?」
もう一人の友人、ビワハヤヒデも彼女の机に寄って、そう声を掛けた。
「タイシン~~~・・・ハヤヒデ~~~・・・」
机に突っ伏したチケゾーは低い声でそう友人達の名前を言い、顔を上げる。
そこにはいつも通り、何かに悩み大きな瞳に涙をためた、泣き顔の彼女の姿があった。
「どおしよぉ~~~~~・・・・・・」
その顔を見て、タイシンとハヤヒデは、いつも通り顔を見合わせた。

話を聞くとこうである。
汗の匂いを気にしたチケゾーが、制汗スプレーを借りて使っていた所、彼女のトレーナーに「気にするな」と言われたこと。
そこまでは良かったが、不意に抱きつかれて「いい香りだ」なんて言われてしまい、驚いてその場で泣き崩れてしまったとのこと。
決してそれが嫌ではなかったが、あまりにも驚いたため、練習に行きづらくて悩んでいるとのことだった。
その話を聞いて顔を真っ赤にするナリタタイシン。
一方でビワハヤヒデは涼しい顔をしていた。何せ彼女はその現場を見ていたのだから。

「それで、チケットはどうしたいんだ?」
ハヤヒデがそう話しかけると、悩んだそぶりを散々したあげく
「わかんないんだよーーーー!!!ハヤヒデ、どうすればいいんだよーーーッ!!!」
なんて頭を抱えて唸り出すチケゾーである。
「なぁ、チケット」
「なに、タイシン」
少し視線を逸らしながら
「チケットは・・・嫌だったの?その、トレーナーにそういう事されて」
と尋ねた。
「イヤ、嫌って訳じゃないんだけどさぁ・・・なんかね、なんか・・・変な気分になっちゃって・・・」
そうしどもろどろに答えるチケゾー。
「具体的には?」
それに被せるように尋ねるハヤヒデ。

「えぇ・・・」
と少し顔を赤くしたチケゾーだが
「うーんと、ね。イヤじゃないんだけど、さ・・・。胸のアタリがさ・・・なんか締め付けられるような感じになっちゃってて・・・。ふわふわっとして、恥ずかしくて・・・」
と言葉にならない気持ちを、たどたどしくも出す。
「アハハ、アタシってなんか変だよねーーーーッ!!!!」
そして困ったような笑顔とともに、ごまかすような言葉が吐き出される。
ハヤヒデはタイシンを見下ろし、タイシンはハヤヒデを見上げ、お互い軽く頷いた。
そしてチケゾーの二人は両腕を抱え、無言で彼女のトレーナーのところに強制連行したのだった。
「うぉおおおおお!!!!!離してッ!!!!!二人とも離してぇぇぇーーーーーーッ!!!!!!」
廊下にチケゾーの声がこだましていた。

チケゾーがトレーナーのところに連れて来られた時には、既に練習が始まっていた。
イヤイヤと叫びながら、ハヤヒデとタイシンに連れてこられたチケゾーが、トレーナーにその存在を気づかれるのも、声の大きさからすぐのことだった。
「あ、チケゾー!」
そう言って走って近づいてくるチケゾーのトレーナー。
「ト、トレーナーさん・・・」
途端にしおらしくなるチケゾーである。
チケゾーが現れた途端、他のチームのウマ娘達も練習の脚を止め、チケゾーとトレーナーの元に近寄ってきた。
「練習に連れてきました」
そう言うのはハヤヒデ。
「す、すまない。ビワハヤヒデ、ナリタタイシン。」
そうトレーナーが軽く頭を下げると
「チケゾー」
と声を掛ける。
「な、ナニ・・・」
うつむいたチケゾーがそう答える。困ったような、にやつきを抱えながら。

その姿を見たトレーナーは
「チケゾー、昨日は本当にすまなかった」
と腰を折り、90度の角度で頭を下げた。
「お前の気持ちも考えず、変なことして申し訳ない」
「ヘンなこと、なんて・・・」
「だ、ダイジョウブだよッ!!!アタシ、全然気にしてないからッ!!!」
「いや、俺の気持ちが収まらないんだ、何かお前のためにできないだろうか?」
「え、えー・・・!?」
お前のために、という言葉がチケゾーの頭の中をぐるぐる回る。
突然の展開に、彼女は何も考えられない状態になっていた。
「チケゾー先輩、甘えちゃってもいいんじゃない?」
「余計なこと言うなって」
「えー!?」
後ろで後輩ウマ娘達が、きゃいきゃい騒いでいる。
しかしその言葉も頭に入っていないようで、ただチケゾーの顔は火照り、視線は地面をさまようばかりだった。

(どうしよう、ナニか、ナニか言わないと・・・)
思いとは裏腹に、出てこない言葉。
どうすればいいのか分からない思い。
またもや理由の分からない涙が彼女の瞳にあふれてくる。
そんな折りだった。
「提案なのだが」
そう、ビワハヤヒデが手を挙げる。
「今度のオークス、チケットとともに観戦に行くのはどうだろう」
その言葉を受け、
「いいね。いい勉強になる」
そう同意するのはナリタタイシン。
「たまには二人で、他人のレースを見て勉強するの、いいんじゃない?」
と言葉を続けた。
「そ、そんなことでいいのか?」
と不安そうな顔のトレーナー。

「どうなんだチケット」
「どうなのチケット」
ハヤヒデとタイシン、二人に詰め寄られ
「ソ、ソレでお願いします・・・」
と消え入りそうな声で答えるチケゾーだった。
「わ、わかった」
と答える彼女のトレーナー。
トレーナーの後ろで後輩ウマ娘達が何やらはしゃいでいるのを聞きながら、頭の整理が相変わらずついていないウィニングチケット。
ウマ娘とトレーナー。二人ともが『デート』だと自覚していない、オークスがもうすぐ始まる。

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