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【ウマ娘】SS 「最高級の肉が格安で食える場所がある。」

  • Posted by: 大蠍
  • 2021-05-19 Wed 00:00:56
  • ウマ娘
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最高級の肉が格安で食える場所がある。
何故私はその言葉に裏があると疑わなかったのか。上手い話には裏があるのが相場というものなのに。
「何が一心同体だ……」
姉貴に紹介された街に訪れた事を、私は開始数秒で後悔していた。
右を向いても左を向いてもチャラチャラした連中ばかり。往来の場であるにも関わらず脳に砂糖でも詰まっているのかと疑う程の戯言を吐き散らすカップルだらけ。中には見知った顔も混ざっている……いや……まさかアレは、アマさんか……?
「クソ……私達は何も見なかった。いいな?」
「あぁ……」
頭痛を抑えてトレーナーに声を掛ける。元より私は人混みが好きではない。更にこの浮ついた空気。正直さっさと帰りたい。
そうしないのは、姉貴が申し込んだコースのせいだ。どうやら今日の決められたプログラムを完遂しなければ違約金が発生するらしい。
「さっさと済ませるぞ」
同行者であるトレーナーの腕を引っ張って最初の目的地を目指す。繋いだ指に力が入るのはこんな街で逸れたりでもしたら、という想像からだ。他意はない。ないと言ったらない。三冠ウマ娘の名に賭けてない。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。

まず最初に指定された場所はハンバーガー専門店。近付くだけで食欲が刺激される匂いが漂ってくる。
隣接されている駐車場のスペースがやたらと広く、ほぼ埋まっている事を見るに味については相当期待できるだろう。停まっている筈なのに小刻みに揺れている車が多いのは少し気になるが。
ナリタブライアン様と担当トレーナー様ですね。お待ちしておりました」
姉貴が既に話を通していたらしく、ドアを潜ると女性スタッフが即座に私達を迎え入れた。
「それでは、一心同体の証をお示し下さい」
「なに……? 私達はクラシック三冠を達成している。ウマ娘とトレーナーとしてはこれ以上無い一心同体の証左だろう」
「いえ、それでは不十分ですね。例えば、このような……」
「なっ!?」
あろう事か、その女性スタッフは私の目の前でトレーナーにしなだれかかった。
更にはその手をトレーナーの服の内側へと伸ばそうとしている。
「どうです? 担当の子の為に一緒に温泉の下見へ行きませんか……?」

「おい、離れろ!」
即座にトレーナーからスタッフを引き剥がし、そいつに触れられた箇所を指で確認する。何か変な物を仕込まれていないかが不安だった。
「大丈夫か?」
「あ、あぁ……」
「ふふ、失礼致しました。一心同体の証明はこれで十分です。当店最高級のお肉を無償でご提供致します」
「……当然だ」
スタッフに席まで案内される。勿論その間も警戒を怠らぬよう、トレーナーと腕を組んだままだ。

「それでは、こちらをお召し上がり下さい」
「ほぉ……」
運ばれて来たメニューに思わず言葉を失う。バンズ、レタス、オニオン、ピクルス、ソース、チーズ、そして肉。そのどれもが最高級である事が見た目からも匂いからも理解出来た。言うだけの事はある。
だが生憎と、肉以外の具は私には不要な物だ。
「お待ちください」
いつも通り野菜を除けようとすると、スタッフから待ったがかかる。
「確かにお肉を無償で提供するとは言いましたが、バンズや野菜はその限りではありません。お肉以外にナリタブライアン様が触れた場合、違約金をいただきます」
「何……? お前、喧嘩を売っているのか? どうやって食えと言うんだ」
「ええ、同行者であるトレーナー様はその限りではありませんので」
「……まさか」

その、まさかだった。
「あーん……」
「あーん……くっ……美味い……」
私が口を開け、トレーナーがハンバーガーを口に運ぶ。エアグルーヴの奴が偶に担当トレーナーにやらせているアレだ。
アイツは『私は生徒会の仕事で両手が塞がっているから仕方ない』だのと言っていたが……。
「……チッ」
屈辱だ。味そのものは今までの人生の中で一番美味いと断言できる味なのが余計に腹立たしい。
トレーナーに野菜を除けさせようとしたが、今度は「当店にてフォークやナイフを利用していいとの契約はありませんのでその場合も違約金をいただきます」と来た。
更に、トレーナーが自分の分を食べる時にも同様だった。
重ねて言うが、屈辱だ。この鼓動の速さは屈辱からに違いない。そして私がトレーナーの唇から目を離せないのも、肉が美味そうだからに他ならない。間違いない。

これらの出来事は全て姉貴の差金。
つまり姉貴は、ここまでして──私に、野菜を食わせようとしているのだ。

その後もバーベキューや寿司で腹を満たしたが、同様の事を要求された……いや、要求が次第にエスカレートし既に接吻紛いの事まで求められている。
何が『彼の頬に着いたソースを舐めとってください』だ。違約金がある以上は逆らう訳にもいかず、お陰でまだ舌先に感覚が残っている。
姉貴のヤツ、一体どういうつもりだ……?
お陰で大分疲れた。鼓動は高鳴りっぱなしだし頬は焼き付くように熱い。ベンチに腰掛けてトレーナーの肩に頭を預けるのも仕方ないだろう。
「……あとは、ホテルで宿泊して帰るだけだな?」
「あぁ……」
だが、それももう終わりだ。
後は一泊して帰るだけなのだから──と一息吐く私を嘲笑うかのように、更なるアクシデントが降り注いだ。

「ん? 雨か……」
まだチェックインの時間には早いが、ホテルのロビーで待機するくらいは許されるだろう。
そう思い、ベンチから腰を上げるが──
「お、おい! ブライアン」
「ん?……なにっ!?」
雨に濡れて、私の上着が透けている! 更にふやけた紙のように破れやすくなっているだと!?
『本日はこの衣装を着てお楽しみください』と半ば強制的にレンタルさせられた服だが、有り得るのかこんな事が……!?
「ブライアン、これを!」
「クッ……スマン……!」
トレーナーがジャケットを脱ぎ、私に羽織らせる。
「ホテルに急ぐぞ!」
「ああ……! クソ、姉貴のヤツ覚えてろよ……!」

「お足元の悪い中、お越し頂きありがとうございます」
ホテルのスタッフとして私達を出迎えたのはウマ娘だった。何故か白い勝負服を着ている。
「……まさか、まだ一心同体を示せとか言うんじゃないだろうな」
雨でずぶ濡れになり、素肌を晒し、トレーナーの上着を借りている。既にこれ以上のものがあるか?
「はい。後一押し必要です」
「チッ……!」
悩んでいる時間も抗議している時間もない。トレーナーは上着を私に貸し与えたせいで身体が冷えている。今まで以上のものとなれば、もう──!
「……おい」
額を押さえて悩むトレーナーに声をかけて、振り向かせる。そして。
「ん……っ」
「っ!?」
冷たくなった唇に、温かい感触。
「……これで、いいだろう」
「はい。問題ありません」

部屋に辿り着くと、トレーナーが私の肩に手を置いて来た。
「ブライアン! さっきのは……!」
不可抗力。已むを得ず。あの場ではそうするしか無かった。さっさと風呂に入れ。風邪を引くぞ。
言いたい事は山程ある、だが……。
「……私から、言わせるな……」
口から出て来たのは、私の嫌う歯切れの悪い言葉だった。
「……さっさと、シャワーでも浴びてこい。風邪をひくぞ」
「………………いや、ブライアンが先に入るべきだ。俺は後でいい」
「馬鹿を言うな。私は大丈夫だ。雨に打たれて走るレースがどれだけあると思っている」
「それでも、ダメだ」
「……チッ」

結局私から先にシャワーを浴びた。その後は互いにチェックイン時の事には触れず、就寝するのみとなったのだが……。
「まさか、ベッドが一つしかないとはな……」
「俺はソファで寝るよ」
「……それでは休息にならんだろう」
「慣れてるから大丈夫だよ」
戯けた事を抜かすトレーナー。こうなるとコイツは梃子でも動かない。
であれば仕方ない──実力行使だ。
「うわっ!?」
有無を言わさず、トレーナーをベッドに押し倒す。
いいから寝ろ、そう口に出そうとして。

「……私は、そんなに魅力がないか」

溢れた言葉は、私自身予期せぬものだった。

「ブライアン……」
「……煩い。何度も、言わせるな」
一日中この街に振り回されたせいか。頭が熱く、思考が鈍ってくる。
彼の手が、私の頬へと伸びてくる。何故か、拒絶する気にはなれなかった。
お互い見つめ合う、距離が近づく、そして。

「」

影が、重なった。



Comments: 2

名無しP@もばます! URL 2021-05-23 Sun 18:32:39

SSと見てサンデーサイレンスが浮かぶのもウマ的には仕方ないんだ…

名無しP@もばます! URL 2021-05-24 Mon 23:23:20

馬刺し的な話かと思ったがそうじゃなかった

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