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【ウマ娘】トウカイテイオーSS カラオケ店個室のドアを開けると、テイオーはひょいと俺を追い越し入り込んだ。

  • Posted by: 大蠍
  • 2021-05-20 Thu 21:00:00
  • ウマ娘
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カラオケ店個室のドアを開けると、テイオーはひょいと俺を追い越し入り込んだ。
意気揚々、そして力強い小走り。まるでレース前のハツラツさだ。
それは単に、休みの日に大好きなカラオケに来たからというだけじゃないだろう。
「それじゃあ……分かってるな?」
「もっちろん!トレーナーこそ、今更やめるとか無しだからね?」
確認すると、テイオーは不敵に笑い返してくる。
「互いに相手の知ってる曲を指定して唄わせる」
「退室時間に合計点数が多かった方の勝ち!負けた方に一つだけなんでも要求できる!」
そう、これは俺が発案し持ち掛けた勝負。
ご覧の通りテイオーは大乗り気でそれを受けたというわけだ。
「「ジャンケン──ポンッ!!」」
どちらから仕掛けるかをジャンケンで決める。俺がパー、テイオーはグー。

「よーし、先攻はもらったぞ!」
「ふふん、別にいいもん。むしろ早速唄えてラッキー!ほらほら、どんな曲でもいいから入力してよ」
余裕綽々とテイオーは既にマイクを手に持ち、画面に顔を向け立っている。
「では期待にお応えして……」
何を歌わせるかは予め決めてある。手早く送信し、画面に表示された曲名は……
「……──荒城の月ぃぃーーー!?!?」
「知ってるだろ?」
「そりゃ、小学校で習ったけどさあ~!」
「なら条件からは外れてないよなあ?ほらほら、曲が始まるぞ」
予想通りの反応に満足しながらニヤニヤ笑って急かすと、テイオーは苦虫を嚙み潰したような顔でわななく。
「むうぅ~~、まさかそうまでして勝ちを取りに来るなんて~!見てろよぉー!」
気合を入れるようにマイクを持ち直し、画面に集中。そして曲が流れだす。
「はーるーこーうーろーうーのーー、はーなーのーえーん~~」
ふふふ、真剣に歌ってはいるがどれほど通用するか。終わって出てきた点数は──

「……92点だとおぉぉーーっっ!?!?」
「へへーんだ!テイオー様を舐めるなよー!!」
まさかの高得点に愕然となる。
持ち前の歌唱力の高さ……だけじゃない。そうか、ライブでの曲も千差万別。シリアスな曲もコミカルな曲もある。
普段からそれらの練習をくり返してるから、曲に合う情感を乗せるのも慣れたものなのだ……!
「見通しが甘かったか……!」
「ふっふっふ。次はこっちの番だからね~」
歯噛みするこちらにお返しとばかりにニヤついた視線を投げかけながら、テイオーはリモコンを操作する。
そして流れ始めた曲は、とても耳慣れた──
「うまぴょい伝説、か!」
「知らないはずはないよね~?トレーナー、張り切ってどうぞ♪」
あからさまに芝居がかったジェスチャーで振ってくるのは、勝ちを確信してるから。
きっと恥ずかしがってろくに歌えないと思ってるんだろう。だが、それは大きな誤算だ!!

「うーーーーーっ!うまぴょい♪うまぴょい♪」
「うえぇっ!?異様に上手い!」
ふ、やはりURA告知イベントで桐生院さんと二人歌って踊ったことは知らなかったようだな!
あの時以来、選曲による羞恥心は俺の中では随分と小さくなったのだ。
「──よーし、88点!接戦だな」
なかなかの点数が出たことに満足しつつ、次にテイオーに歌わせる曲を選ぶためにリモコンを手に取る。
しかしそんな俺を見て、テイオーはフッと不敵な笑みを浮かべた。
「トレーナー、マヤノじゃないけど……ボク分かっちゃった」
真意を確かめるようにテーブル越しに身を乗り出し、こちらの顔を覗き込んでくる。
「この先出してくるのは童謡・演歌・子供向けアニメソングとかでしょ」
「なっ……!?どうしてそれが──!」
「あははは、やっぱり!最初の荒城の月で方向性が分かっちゃったもんねー!」
誤算に喜んでた俺だったが、こちらの誤算の方がずっと大きかったようだ……。
「ニッシシ!いいよ、なんでも完璧に歌ってあげる」
曲候補を替えようにもプランがない。そして動揺のないテイオーは強かった……。

「やったやった!184点差で圧勝ーー!やっぱりボクって強いね♪」
カラオケ店出た後も、テイオーはしきりに胸を張って勝利をアピールしてくる。
初手で調子を狂わせる作戦が失敗した時点で負けは決まってたのだ。まさかはぐれウマ旅情まで完璧に歌いこなすとは……。
「なーんでも、一つだけきいてくれるんだよねー?」
「くっ……。ああ、ちゃんと守るさ」
「ふふん♪じゃあ何にしようかな……ちょっと時間ちょうだい」
真面目な顔で思案を始めたテイオーに思わず身構えてしまう。これは本気で普段できない要求をするつもりだ……。
ウマ娘用スイーツコースか。ブランドもの最新の競技用シューズか。はたまた……
「…………よし!決めた!」
テイオーは深く頷くと、こちらに向き直る。
「この夏、ナイトプールがオープンするんだって。夏合宿までは忙しいし、終わってからでいいから連れてってよ!」
「……え、そんなのでいいのか?」
「そんなのって」

拍子抜けして訊くと、テイオーはムッとした顔になった。
「トレーナーは大人だから自由だけどさ、ボクらは門限厳しいんだよ?夜プールに遊びになんて行けないよ」
「なるほど」
「でもトレーナー同伴なら許可が下りるはずだから……ねっ?」
両手を合わせ、期待するようにチラッと視線を投げかけられる。
それが要求なら叶えてやるのが筋だ。そうでなくても、俺はテイオーのこういうお願いに弱い。
「そういうことなら、いいぞ。許可取ってやる」
「やったあ!ありがと、トレーナー♪──あ、じゃあ水着も買ってもらっちゃおうかな~?」
「おい!叶えるのは一つだけだぞ!?」
「プールで楽しむっていうお願いのうちだよ」
ふいにテイオーはこちらに身を寄せ、耳打ちしてくる。
「トレーナーに好きなの選ばせてあげていいよ?」
「バッ……!」
「わ、赤くなってるー!どんなの想像したのさ、エッチ!」

パッと飛びのかれ囃し立てられるのは面白くないが──実際に想像してしまったので反論できない。

「ふふ、楽しみ。早くその日が来ないかな~!」
そう言ってテイオーが見上げる先には、梅雨明けの空。
夏の到来をしっかりと感じさせる鮮烈な青が一面に広がっていた。
そして日々は足早に過ぎ去り。約束のその日がやってきた──。

「トレーナー、おまたせ」
その声に振り向き姿を認めた瞬間、胸がトクンと跳ねた。
そこにはビキニ姿のテイオーが立っていた。約束をした日に見たあの空を思わせる、鮮やかな青が目に眩しい。
といっても大きなフレアの付いたデザインで、下もスカートタイプでセクシーさよりも可愛さを前面に出したものだが。
しかしそれが小柄ながらもしっかりと少女らしさを感じさせるテイオーのスタイルにはぴったりだ。
一応断っておくと、買わされはしたが俺が選んだわけじゃない。
さすがにそこは冗談だったようだ。……ホッとしたような、ほんのちょっぴり残念なような。
「よく似合ってる。可愛いぞ」
正直に褒めると、テイオーはくすぐったそうにはにかんでプールの方に向き直る。
「ナイトプールなんて初めてだけど……綺麗だね」
「ああ」」
様々な色でライトアップされたプールの水面は、ゆらめくことでより複雑に光を反射して不可思議な紋様を広げている。
そしてこのプールは明暗のコントラストを意識してるようで、わざと陰の部分が生まれるよう柱や壁が設置されていてそれがまた神秘的だ。

「ね、早く泳ごう!」
そう急かされ、手を引かれてプールに入る。
「いっくよー!それそれ!!」
足が着くかどうかのうちに水飛沫をかけてきたので、こちらも応戦。
ついこないだの合宿でも同じ経験をしたばかりだが、飛び散る水滴はライトで様々に色付ききらめいて。
まるで宝石の粒をかけあってるようで、これが本当に現実なのか感覚が曖昧になってくる。

そうしてしばらくの間はしゃぎあって一段落つくと、テイオーが離れた暗がりを指さした。
「ね、あっちなんだか面白そうじゃない?行ってみようよ」
「暗いだけだし、危なくないか……?」
「ヘーキヘーキ!心配性だなあ。なんでも要求叶えてくれるんじゃないの?」
「だから一つだけだって!」
「これもプールを楽しむお願いのうちだってば!」

こちらが止める間もなくテイオーはスイスイと泳いでいってしまう。
ああもう、こういうところは本当にテイオー様だな……。
しかたなく俺も立ち泳ぎで後を追う。
暗がりに入ると、こちらに背を向けたまま立ち尽くすテイオーの姿がうっすら浮かび上がった。
「テイオー……?」
「…………あのね。本当に叶えてほしいことは、別にあるんだ」
「またか!ハア……一体なんだ?」
呆れながら尋ねると、テイオーはゆっくりとこちらに向き直り距離を詰めた。──近すぎるほどに。
「え……」
戸惑う俺の顔に背伸びしたテイオーの顔が迫り──ほんの一瞬、唇が触れる。
「でもそれを要求しちゃうのは違う気がして。だから代わりに、切り出せるロマンチックな場所を考えたの」
目を伏せながらそう言って……テイオーはもう一度、俺を見上げてくる。
「──ボクじゃダメ?」

不安げに見つめる瞳はプールの水面と同じように揺らいで、心惹きこむきらめきを湛えている。
「……耳が痛いな」
「え……?」
俺は顔を引き締め直し、その瞳をしっかりと見つめ直す。
「──俺がなんであんな勝負を仕掛けて、どんな大それた要求をしようと思ってたか……分かるか?」
数秒の空白。そしてテイオーの頬が赤く染まり、表情が柔らかにほころんだ。
「今度また、勝負しようよ」
「カラオケでか?もう勝てる気がしないけど……」
「うん、次もボクが勝つよ。だから──」
テイオーはそっと目を閉じる。
「前渡し、してくれる?」
あまりにも強気の申し出に苦笑してしまう。
けど俺はそんなところに惚れたのだ。そして、勝ちたい娘を勝たせてやるのがトレーナーの役目。
だから──テイオーの肩を抱き、今度はしっかりと唇を重ねた。

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